Xcodeで1つのプロジェクトから無料版と有料版のiOSアプリをビルドする

iOSアプリの無料版と有料版を提供するとき等に、Xcodeの1つのプロジェクトから無料版と有料版の2つのアプリをビルドしたいケースがあります。

Xcodeで2つのプロジェクトに分けてしまうと、バグ修正や新機能追加のたびに両プロジェクトをコーディングする必要があって大変なので、広告や有無や制限値の差異程度であれば1つのプロジェクトから2つのアプリをビルドすると楽です。

ここでは1つのプロジェクトの同一ソースから2つのアプリをビルドする方法を説明します。

Xcode上での作業

ここでは、有料版が既にあって、新たに無料版を追加する場合を例にして説明します。

  1. 有料版のTargetを複製して無料版を作る

    1. Projectツリーを開く
    2. Targets > 有料版アプリを右クリックする
    3. Duplicateをクリックして複製する
    4. 無料版のTarget名が「Target名 copy」となっているので無料版の名前に修正する
    5. 無料版のTarget > General > Identity > Bundle Identifierを無料版のものに修正する
  2. 無料版のプロダクト名を設定する

    1. 無料版のTarget > Build Settings > Packaging > Product Name
    2. Product Nameが「Target名 copy」となっているので無料版の名前に修正する

    f:id:slowquery:20140506201727p:plain

  3. 無料版のビルド時のマクロを設定する

    1. 無料版のTarget > Build Settings -> Apple LLVM 5.X - Preprocessing
    2. Preprocessor MacrosのDebugRelease両方に無料版のビルドフラグを追加する

       FREE_VERSION=1
      

    f:id:slowquery:20140506201738p:plain

  4. コードに#ifdef無料版と有料版の処理を分岐させる

     #ifdef FREE_VERSION
         無料版の処理
     #elif
         有料版の処理
     #endif
    

    ※注意 無料版/有料版のコードを分岐させるには以下のようなパターンがあります。

    1. シングルトンオブジェクトを作って、一度#ifdef内で有料/無料フラグを設定して、それ以降はif文で分岐する
    2. #ifdefで関数内で処理を分岐する
    3. #ifdefで無料版の関数と有料版の関数をわける

    無料版にしか存在しない広告系の関数などは3の方法で消すのがよいです。一方で、関数中のしきい値が異なる程度なら1や2の方法で分岐するのがよいかもしれません。

    #ifdefマクロは強力で便利ですが、Xcodeのシンタックスハイライトを崩すケースや無料/有料両方のコード修正が必要になるケースやリファクタリング機能がうまく使えなくなるケースなど様々なデメリットもあるため、メンテナンスコストを考えて使うと良いと思います。